広島弁護士会所属 福山市の弁護士森脇淳一

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近況(2020年2月)

2020.03.02

 テレビも新聞も、私がrom(リードオンリーメンバー。和製英語で、英語ではlurkerというらしい)となっているSNSでも新型コロナウイルスの話題ばかりである。広島弁護士会で開催する予定だった諸集会も軒並み中止や延期となり、福山地区会の私が所属する委員会でも3月15日に市民向けに講演者を招いての集会(私が司会をすることになっていた)が予定されていたが、同委員会で同日開催の是非が問題になり、私は予定通り開催に一票を入れたもののやはり延期となるらしい。開催を主張した理由は、風邪の原因の多くは(旧型)コロナウイルスだというから、たしかに免疫のある人が全くいないという意味で蔓延の可能性が高く、脅威だろうが、免疫力のある人にとっては他の(初めて感染する)ウイルスと、危険性にそう違いはないのではないかと考えたからである。素人の浅はかな考えなのかもしれないが。
 
 さて、今回は、私の近況として2つの話題について記したい。
 1つ目は、私が、先週月曜日の休日(2月24日)、「成年後見制度を考える会」の依頼を受けて、同会の第2回(被害)報告会で成年後見制度の歴史等について講演したが、そのことに関する話である。
 その会は、私が、このコラムに「司法制度論」として成年後見制度の制度設計や最高裁家庭局の指示に問題がある旨書いたのを見て私に事件の依頼をしてきた方もメンバーの一人となっており、その方の紹介で知ったもので、成年後見制度による「被害者」が作った団体である。
 実は、私が裁判官をしている間は、上記コラムに書いたように、後見裁判所や成年後見人及び成年後見を申し立てる当事者対応をする裁判所の職員の苦労に目が向いていただけで、成年後見制度そのものによって「被害」を受けている人の存在には全く気づいていなかった。
 詳細は、「成年後見制度を考える会」のホームページ(https://www.koken110.net)を是非ご覧いただきたいが、将来の相続争いの前哨戦として、高齢者を自宅で介護している方の身体的・精神的・経済的「虐待」を理由に、その方の(高齢者の推定相続人である)兄弟姉妹や、場合によっては地方公共団体の首長申立てによって選任された成年後見人(注1)が、それまで高齢者を介護していた方の同意なくその高齢者を施設に入れ、その高齢者を介護していた方は、その高齢者がどこの施設にいるのかも知らされず、あるいは、それが分かっても、成年後見人やその指示を受けた施設からその高齢者に会うことを拒否されているとか、成年後見人が高齢者の財産をどのように管理しているかについて知ろうとしても、後見裁判所が記録の閲覧謄写を許可しないことなどによる「被害」を訴える方(その多くは自宅で高齢者を介護していた方)がたくさんいらっしゃるようだ。
 前述の私の依頼者も、経緯は少し違うが、全く同じ(成年後見人及び施設からの面会拒絶及び後見裁判所からの後見監督記録閲覧拒否)「被害」を受けており、今後、その依頼者とともに、成年後見人、施設及び後見裁判所を相手に戦わざるを得ない状況である。
 真実、かつて身体的・精神的「虐待」があり、その「虐待者」が高齢者と会うことが、仮に、成年後見人や入所している施設職員の監視のもとであったとしても、その高齢者に著しい精神的苦痛を与えるなどの事情があれば、「虐待者」が高齢者に面会することを拒まれても仕方がないのかもしれない。しかし、「被害者」のお話をうかがう限り、果たして「虐待」があったのかどうか自体疑問に感じることが多く、成年後見人や施設職員の監視の下であっても、その高齢者に会うことがその高齢者に精神的被害を与えるとまでいえそうな事案は、私の知る限りないように思う。
 むしろ、成年被後見人は、住み慣れた自宅で余生を送りたいにのに、無理やり施設に入れられたとして、自宅に戻りたいと願っていると聞くことが多く、もしそうならば、自己決定権の尊重及びノーマラーゼーションを旨とする成年後見制度に反する事態だといえよう。
 「経済的虐待」を理由とする成年後見制度の申立て及び高齢者の従前の介護者からの引き離しは、介護者の中には、高齢の親の介護のために自分の仕事をやめるなどして経済的に親の資産に頼っている方も多いので、成年後見の開始によって即座に経済的に困窮し、親名義の家に住み続けていると成年後見人から家賃を請求されるなどし、前途を悲観して自殺するしかないなどという方もいるようだ。
 まだまだ勉強不足だが、成年後見制度の問題は非常に根深いと感じるこの頃である。
 
 今ひとつの話題は、先週金曜日から土曜日(2月28日〜29日)にかけて、津家裁伊賀支部及び伊賀簡裁の調停委員や元調停委員さんらで作った親睦団体主催の懇親会に参加し、楽しい時間を過ごしたことだ。
 私は、平成13年4月から平成17年3月までの4年間、津地家裁伊賀支部及び伊賀簡裁(赴任当初は「上野支部」、「上野簡裁」の名称だったが、市町村合併で名称が変わった)に一人支部長として勤務し、同家裁及び簡裁の調停委員らと親しくなったが、私が伊賀を離れた後も、同裁判所の調停委員の方々と交流を続け、(私の後任の支部長が参加しないため)調停委員らで組織する伊賀調停協会(注2)の旅行会や懇親会、褒章等を受けた調停委員の祝賀会などに参加してきた。
 私が裁判所に入所したころは、調停委員は裁判所の仲間として、裁判官や裁判所職員らも一緒に旅行に行ったり、飲み食いしたりすることが多く(私は、その頃は調停委員と一緒に仕事をすることがなく、その当時のことには詳しくない)、調停協会の会計事務も、裁判所の総務課(庶務係等)が担当していたが、たしか、私が上野支部に赴任した平成13年前後には、裁判所職員と調停委員が一緒に旅行に行ったり飲み食いしたりすることがよくないことのように言われ、調停協会の会計も裁判所職員から調停協会に移されるなどし、ついには、調停協会の新年会等に裁判所職員がお呼ばれすることも問題視されるようになったようである。その理由やその経緯等については、私は全く門外漢でよく分からない。しかし、私は、調停委員が非常勤の国家公務員として裁判所職員とともに働く「仲間」である以上、そのような垣根があることに疑問を感じ、従前どおり、調停委員の方と親しく交際してきたものである。
 

(注1)それら成年後見人に就任する者の多くは弁護士や司法書士であり、その理由が、最高裁から各家庭裁判所に対し金融財産1000万円(手持ち現金200万円とすると、1200万円)以上を有する成年被後見人については「専門職成年後見人」を付すよう命じていることによること、親族ではなく専門職が成年後見人に就く限りは、成年被後見人が亡くなるまでずっとその財産から毎月3〜5万円が報酬としてその専門職に支給されること、ところが、その程度の報酬では、弁護士や司法書士は、一般に成年後見人の義務と考えられている、成年被後見人が施設(その専門職の事務所から遠方にあることも多い)入所した場合でも月に一度は成年被後見人に面会してその様子やその要望を聞くなどすると全くペイしないので、それが行われることが少ないこと(就任して一度は面会しても、その後全く面会に行かないというとんでもない成年後見人もいるそうである)など、現状の成年後見制度の問題は多岐にわたり、かつ根深いと思う。
(注2)はるか昔から、各簡易裁判所(地方裁判所)及び家庭裁判所の調停委員が、親睦団体(互いの技術を磨くための自主的勉強会をすることも多い)としての「調停協会」を結成していた(民事と家事とでそれぞれ調停協会を設立しているところもある)。そして、各調停協会が都道府県毎に集まって調停協会(連合会)を結成し、現在では、全国の調停協会(連合会)が集まって、一つの法人として「公益財団法人日本調停協会連合会」が結成されている(ようだが、私は、今日そのようになったまでの歴史については詳しくない)。