2019年11月1日に公開したコラムのエッセイ「一周年」で記したように、法テラスの資力基準以上の収入や資産があるため法テラスの民事法律扶助(代理援助)が受けられない方からも事件の委任を受ける(示談交渉や調停申立て及び審判申立ての申立人、訴訟提起の原告等並びにそれらの申立ての相手方や訴訟の被告等の代理人になる)ようになってきました。そして、その際、依頼者の方が最も気になさるのが、私に支払う料金のことであることは明らかだし、日弁連が制定した「弁護士の報酬に関する規程」は、弁護士が「報酬に関する基準」を作成して事務所に備え置くことを義務付けているので、これまで受任したことのある事件類型を中心に、その経験を踏まえて、それを明らかにしたいと思い立ちました(注1)。
ただ、弁護士の仕事は相手のあることですので、事件に着手する前にどれほどの書面作成や証拠収集等の事務および終結までの期間が必要なのか全く予測できないことが多く、特に、「着手金」については合理的な算定をすることは困難です。かといって、着手金なしで、依頼者が勝訴した場合、その勝訴額に対する高率の成功報酬を支払ってもらう約束で仕事をする(アメリカでは獲得した損害賠償金の3分の1の報酬を委任者から受け取ることも一般的だと聞いています)のは、いわゆるタダ働きするということになるし、弊害も大きいように思います。
そこで、以下、これまで私が受任した経験のある事件類型について、着手金額(消費税を含む。原則として、別途、申立手数料、交通費及び公正証書作成費用等の実費はいただきます)並びに報酬金額を示しますが、 あくまで「弁護士森脇淳一」が受任する場合の標準的金額だとお考えください。
(以下、2021.12.8追記)
コラム「弁護士生活3年経過の現状報告」で記したように、着手金額(注2)を2022年1月から改訂させていただくこととしました。もっとも、上記コラムでは「倍ほど」と書きましたが、旧日弁連報酬基準規程と照らし合わせると、倍にすると、上記基準を超えることが分かったので、1.5倍ほど(そうすると、同基準より若干安い)とさせていただくことにしました。なお、破産・個人再生事件についてはコラム「弁護士生活3年経過の現状報告」の中で述べた理由により原則お断りすることにしましたが、他事件の依頼者から併せて依頼される場合などでは受任させていただかざるを得ないので、料金表自体は残します。
法テラスは利用しないが、資金的にお困りの方からの受任に際し、柔軟に対応させていただくことは、私という人間が変わらない以上、従前通りになると思います。また、着手金を少なめにし、報酬を得た利益の1割ではなく2割ないしそれ以上にすることなども御相談ください。
(以下、2023.4.8追記し、訂正)
原則受任しないことにした破産・再生申立事件や債務整理事件の料金表示を残していたことは、やはり中途半端なので、それを削除するとともに、最近、時々依頼を受ける交渉のみ(従前からお受けしている交通事故についての保険会社との交渉に加え、離婚や離婚後の紛争などについて、女性から依頼を受けることも多い)の料金(公正証書作成費用等は別途申し受けます)を設定しました。
(以下、2023.7.29追記)
最近、他の法律事務所の離婚調停の着手金(訴額がないと言って良い)が、私の想像以上に高いことを知り、これまでのような安価で受任していては、他の法律事務所にご迷惑をかけているやもしれぬと思い始め、同事務所の着手金額まではいきませんが、それを増額しました。また、旧日弁連報酬基準規定による受任の際の最低着手金額が10万円であることから、交渉及び示談交渉等の着手金(今回、「交渉のみ」の項目は削除しました)も増額させていただきました。
下記3〜5については、広島地・家裁福山支部及び尾道支部または福山簡裁及び尾道簡裁を利用する場合の金額(10%の消費税を含む)で、他の裁判所を利用する場合は、裁判所によっては半日~1日またはそれ以上の仕事になって翌日の仕事にも影響が出るので、別途2〜5万円の日当をいただくこととしています。
1 示談交渉事件(それに伴う示談書や契約書作成事務を含む。なお、協議離婚や面会交流等についての交渉を含みます。事情によっては、相手方からの通知を受けるだけの事務を受任することもありますが、その場合の費用については、別途協議(半額〜2/3)したいと思います)
着手金(実費込み。私の場合、実費は、訴訟提起の場合の印紙や遠方への出張費用以外はいただかないことが多いです)11万円(なお、調停や訴訟に移行した場合は、その移行の際に、別途、2以下の着手金との差額をいただきます)
示談交渉が成立した場合の報酬金は、着手金と同額か、実際に得た利益(経済的利益。注3)の1割相当額が着手金額を超えた場合はその額。
2 家事調停事件(離婚、婚姻費用分担、養育費請求、親権者変更等(遺産分割事件を除く)。なお、それらのうちの複数事件を受任しても、当事者が同一で、かつ、同一期日で進行する限り、別途着手金はいただきません。)
着手金22万円(審判に移行しても別途着手金はいただきませんが、訴訟提起や即時抗告した場合は別途11万円)。
調停成立または審判確定時の報酬金は、1に同じ。
3 民事(4項の人事訴訟や、未だ経験のない行政訴訟を除く趣旨です)訴訟事件
(1)経済的利益が500万円未満の事件
着手金22万円
報酬金は、勝訴額(原告の場合は得た金額、被告の場合は請求された金額から判決で認容された、または和解で認めた金額を差し引いた金額(注5))の1割
(2)経済的利益が500万円以上700万円未満の事件
着手金33万円
報酬金は、(1)に同じ。
(3) 経済的利益が700万円以上900万円未満の事件
着手金44万円
報酬額は、(1)に同じ。
(4)経済的利益が900万円以上の事件
着手金55万円
報酬額は、(1)に同じ。
* 経済的利益(以下「訴額」という)が、より高額の訴訟事件の着手金については、注2記載のとおり、より高額に定めるべきなのかもしれません。しかし、弁護士の仕事としての手間は、基本的に訴額の多寡により変わることはありません。しかも、訴額の高い事件に関わる当事者が、必ずしも裕福な方とは限らず、むしろ逆のことも多いことを経験します。そして、その場合、当事者が裁判所に収める手数料が相当額に上り(「手数料額早見表」で検索すると、裁判所作成の一覧表が確認できます)、その負担(原告の場合はもとより、被告となって敗訴した場合は、判決で、その費用の負担も命じられます)は大きいので、着手金としては、55万円にとどめることにします。
4 人事訴訟事件(離婚、養子縁組無効等)事件
日弁連報酬等基準も、1〜3項の事件類型とは別に基準を設けているように、着手金および報酬金額ともに、なかなか基準を決めにくい類型の事件です。
離婚事件については、離婚のみを求めるのであればさほどの事務の必要はないことが多いのですが、それでも、当事者が有責配偶者かどうかが争われる場合は事務もそれなりに多くなりがちで、親権者指定や財産分与の争いがあると相当の事務が必要になることが多く、深刻な争いがあれば、審理期間も長期化しがちです。
ですので、着手金は33万円(調停から移行した場合は、既に22万円頂いているでしょうから、追加11万円)とし、報酬金は1項に同じとします。
5 1〜4項以外の事件(注6)
事件の委任を受ける際、旧日弁連報酬等基準(注2参照)を参考に、依頼者と話し合って決めたいと思います。
(注1) ここで示したのは、法テラスの資力要件を満たさない、すなわち、比較的経済的余裕のある方を対象とした着手金および報酬金額の基準です。したがって、資力はないものの、なんらかの事情で法テラスを利用しない方については、その資力を考慮し、相当程度減額することもありますのでご相談ください。
(注2) 旧日弁連報酬等基準によると、訴訟事件や家事審判事件については、経済的利益が300万円以下の場合、着手金は、その8%(ただし、最低額10万円。なお、報酬金は16%)で、経済的利益が300万円を超え3000万円まで場合の着手金は、その超えた金額について5%を加えるものとし、示談交渉および調停事件についても同様だが、訴訟事件等の3分の2に減額することができる、としています(3000万円を超える場合や、その他の事件等については、ネットで旧日弁連報酬等基準を参照してください)。
(注3) 利益(経済的利益)とは、申立人または原告あるいは相手方または被告の立場を問わず請求するあるいは請求されている金銭あるいは物の価値のおおよその金額のことを指します。
(注4) 離縁、婚姻無効確認、離婚無効確認、認知等、夫婦や親子等の関係についての争いを解決する訴訟。
(注5) したがって、原告の場合は全部敗訴したとき、被告の場合は原告の請求が全部認められたときには、報酬はゼロになります。
(注6)保全事件、執行事件については、3項の基準から3~5割減額して受任しています。