広島弁護士会所属 福山市の弁護士森脇淳一

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後見事件について(4)

2025.11.08

 先日、「弁護士阪口徳雄さんの活動と成果を引き継ぐ交流会」で久々に出逢った知人弁護士から、「弁護士は巡り合わせだ」という言葉を聞いて、たしかに私と後見被害者の事件は、私にとっての「巡り合わせ」(実は裁判官時代からであったが)だなと感じた。
 以下は、私が、広島弁護士会福山地区会の「会報」に投稿した文を一部改訂したものである。
 これによって、私が弁護士になって以降の「後見事件」についての「巡り合わせ」について理解していただけると思う。

 

1 私が弁護士になってすぐに私の法律相談に来た人(名前を公開しているので、以下「石井さん」という)が、何人もの弁護士を当たって断られた末、受任に応じてくれた弁護士数名に順次依頼して施設にいる親戚の老人(施設の顧問弁護士がその老人本人の代理人として後見開始を申し立て、同弁護士が推薦した弁護士が成年後見人になっていた)と面会したいと申し入れても成年後見人が施設に指示して一度も会わせてもらえない、何とか会えるようにしてもらえないだろうか、と私に依頼した。
 当時、私は、後見制度にそのような問題が生じているとは夢にも思わず、「(親戚なのに会えないなんて)そんな馬鹿な」と言って(当時、受任事件がなく、全く暇だったので)一緒に淡路島のその施設に行って、その老人との面会を求めたが、その施設職員は後見人の承諾がなければ会わせられないと言う。そこで、私が、その後見人弁護士の承諾を得ようと同弁護士の事務所に電話をした。すると、同事務所の女性職員が、同弁護士が行っている筈という裁判所に電話したら期日変更されており、それならと彼女が次に行っている可能性があると言う日弁連に彼女は掛けたことがないと言うので私が電話したら、委員会に出席予定だが、その弁護士は来ていないとのことで、結局連絡が取れなかった(たしか連休明けの月曜日だったので、私は「ふふん」と思った)、ということから、私の後見問題との関わりが始まった。
2 全国で同様の問題(資産家である老人と同居などしてその介護等に当たっていた子以外の子が後見を申し立て、専門家成年後見人が介護等していた子と老人を引き離して施設に入れ、その子を決して老人と接触させないなど(注ア)が発生していることを知った石井さんは、全国組織「成年後見と家族の会」を立ち上げその代表者となり、私もいつの間にか同会の「支援者」に名を連ねた。
 最近では、国会やマスコミでも、ようやく後見被害者(成年後見制度によって苦しんでいる人)のことが取りあげられるようになり(注イ)、丁度成年後見制度の改正が議論されていることもあって石井さんが法制審議会民法部会に参考人として招致されることになって、石井さんの推薦で私と後見被害者の支援をしている「後見の杜」代表宮内康二さんも石井さんとともに来る令和7年7月22日午後1時30分からそれぞれ意見を述べることになったわけである(末尾に法務省大臣官房司法法制部司法法制課長名義の私に対する招致書を添付しておく。なお、令和7年11月13日には、衆議院議員会館で国会議員にも話をする予定)。
(注ア)平成28年に成立した成年後見利用促進法の下、予算が付いたせいだと思うが、最近は、主に老母と娘との諍い(私独自の見解かもしれないが、どうも認知になった老母は、まだ若い娘をやっかむのか、揉めることが多いようである)を聞きつけた地公体(東京、大阪などの大都市及びその周辺が多いが、徳島からも同様の被害を聞く)の高齢者保護課が高齢者虐待防止法を適用して老母を娘から引き離して施設に入れ、決して娘にその居場所を教えず、娘が血眼になって探したり、地公体を相手に訴訟したりする事例が多い。
(注イ)ここにくるまで、私は何人もの記者に後見被害についてレクチャーし、その記者は興味を持ってくれたが、デスクに却下されて記事にはならなかった。宇品のプリンスホテルの一室でNHKのクローズアップ現代の製作会社ディレクターのインタビューを受けたこともあったが、それもボツになったりした。理由は、私が、現行の後見制度に「反対」の意見を述べたからだったそうである。しかし、それを言わなかったら、私がインタビューを受ける意味がなくなる。
3 以下は、上記ヒアリングに当たり、前もって法務省の民法部会の担当である波多野紀夫参事官に提出した(民法部会のメンバーに事前配布されるとのこと)私の意見書である。
 なお、私は、そのヒアリングの冒頭、同意見書に書いていないが、過払金バブルで1人1億円も稼いで経費が膨れた弁護士が、そのバブルがはじけても経費を減らせず、目の前の自由になる被後見人の財産に手を出すか、破産して弁護士資格を失い、路頭に迷うかのどちらかを選ばなければならない立場に置かれた弁護士でも、前者を選ばないだろうと考える(としか思われない)最高裁家庭局の脳天気さ(アホさ)批判等を述べるつもりである(注ウ)。
(注ウ)実際は、アホとは言わなかったが、弁護士を成年後見人に選任することは、即刻やめるべきだと述べた(つもりだ。私の発言が、法務省の「法制審議会民法(成年後見等関係)部会第23回会議(令和7年7月22日開催)」のページに「議事録」として掲載されている)。

(以下引用)
令和7年7月22日
                    意  見  書
法制審議会民法(成年後見等関係)部会御中
                                   〒720-0034 広島県福山市若松町10番5号 法友会館3階
                                          電話:084-926-5512 Fax:084-921-6144
                                          森谷・森脇法律事務所(広島弁護士会所属)
                                          弁護士 森 脇 淳 一(登録番号:57141)
 当職は、「後見制度と家族の会」代表 石井靖子氏(実は、当職が受任している訴訟の依頼人)からの要請を受けて、以下「成年後見制度改正」についての意見を述べますが、当職は、主に他の弁護士事務所で依頼を断られた民事事件(注1)を中心に常時100件を超える受任事件を手掛け多忙を極めているため、非常に雑ぱくな意見になることと、同意見の根拠として、これまで上記制度に関し当職が作成した文(平成30年9月末日まで35年半奉職していた裁判官時代のものを含む)を引用することをお許し願いたい。
 なお、本意見書のすくなくとも第1、第2(「注」についてはご承知の方も多いと思うので読み飛ばしていただいて結構です)には、是非とも目を通していただき、当日は、主に別の話題についても述べたいと考えている。
(注1)「依頼を断られた」理由の多くは、それらの事件が、①「手間がかかって利益が得られないこと」、②「依頼者に性格的問題がある、あるいは精神的に病んでいて、依頼者対応に苦労しそうなこと」、③後見被害者(後見制度に関して苦痛を味わっている人のこと。私の造語かもしれない)を依頼人とし、相手方が専門家後見人、あるいは地方公共団体の首長である事件であること、である。
【①について】
 民事事件に要する「手間」は、大凡有利な証拠が多ければ少なく、少なければ多いから大体予想がつく(ときに依頼者の「嘘」で痛い目に遭うこともあるが)。
 手間がかかっても勝訴できれば(勝訴額に一定割合の報酬をもらうので)、訴額が大きければ利益は多いが、訴額が小さければ勝訴しても利益は小さい。
 だから、事務所経営を重視すれば、①の事件は受任すべきではない。
 しかし、私は、民事訴訟は、刑事事件(革命も)を起こさせないための防波堤の意味もあると考えているから、「恨み」等を晴らすための民事訴訟でも、(所謂不当訴訟でない限り)敗訴の可能性が高い事件でも受任する。
 また、勝訴しても、被告に財産がなく、強制執行できないことが明らかな事件(これも報酬は取りにくい)でも、依頼者に「費用をかけて、紙きれ(つまり金にならない判決書)を得るだけでも訴訟したいのか」と確認の上、受任する。
 以上が、①の事件を私が受任する理由である。
【②について】
 裁判官時代から感じていたことであるが、その多くは、当該事件を原因とする過酷な状況(その「状況」の中には、事実を知る依頼者が確信していた「裁判所は必ず真実を明らかにして、相手の嘘を暴いてくれるところだ」という「幻想」が、明らかな「誤判」により打ち砕かれ、それでもなお、その幻想を持ち続けていることから生じたと確信できる場合もあった)に直面したことで、精神的病を発症したのではないかと思われる方がいた。
 そのような方の中には、どうしても「訴え」を提起したいとドクターならぬ、「弁護士ショッピング」をされる方も多い。
 私は、福山支部の裁判官時代に御迷惑を掛けたかもしれない弁護士の方々への「お礼奉公」のつもりで、②の事件も受任している(実は、私は精神的病にも非常に興味があるので、それも理由の一つではある)。
【③について】
 私は、専門家(多くは弁護士)後見人及び元後見人を被告とする訴訟をいくつも提起しているが、弁護士を被告として訴えることを嫌う弁護士が多いようで、そのような事件を引き受ける弁護士が地元で見つからず、「後見制度と家族の会」などを通じて当職を知った、多くは東京、名古屋、大阪、福岡等の大都市及びその周辺のほか、福井、徳島などに住む後見被害者からも、専門家後見人や、最近、特に増えているのであるが、首長申立てにより親族が被後見人にされたことから、地方公共団体を被告とする訴訟を引き受けてほしいという依頼や相談がひっきりなしにある。
 手に余るので本人訴訟してもらい、継続的に電話で相談を受けている方も何人もいるが、余りに酷い事例は断り切れず引き受けている。
 しかし、これらの訴訟は、法律的にも証拠的にも勝訴できると思う事件であっても受訴裁判所に「屁理屈」を駆使され(あくまで当職の見解)、連敗が続いている。
第1 我が国の成年後見制度についての改正案(骨子)についての当職の意見
 まずは、「サマリー」として上記意見を述べる。
 貴部会は、石井・宮内両参考人も述べると思われるし、当職もその極く一部を後述するとおり、現代の「真昼の暗黒」とでも評すべき甚だしい人権侵害を生んでいるこの制度の抜本改正を導く「可能性」を秘める存在と理解しているが、他方では、失礼ながら、貴部会においても、様々なしがらみや「忖度」の必要があるのではないかとも推察しており、当職としては、至極当たり前だと考える当職の意見が採用される筈はないだろうとは理解しつつ、やはり述べずにはいられず、ときに過激な言い回しになる当職の切迫した思いを察していただきたい。なお、上記意見の理由については、本意見書の第2以下からご理解いただきたい。
1 成年後見制度の類型としては、後見と補助(ドイツ民法に倣い「世話」でもよい(注2))の2類型とし、後見開始の要件は法務省民事局参事官室「成年後見制度の改正に関する要綱試案補足説明(平成10年4月14日)」(以下「補足説明」という)15ページ記載のとおり、「遷延性植物状態及び精神上の障害によって、それに類する意思を全く表示することができない状況にある者」と、法文上明確にし(なお、この場合は鑑定不要としてもよいかもしれないが、いわゆる「閉じ込め症候群」の人でも医学及び科学の進歩により意思疎通ができれば成年後見の対象にならないことは明らか)それ以外の権利義務を行使するについて何らかの支援を要する人については「補助(世話)人」を付する。
2 成年後見人は、いかにその所有財産が多くても、第1順位として、後見開始時点における成年被後見人の推定法定相続人全員(その全員の合意により、その権限をその中の1名又は特定の複数人、あるいは、福祉職である専門家に委任することも可であるが、「合意」できない場合は、成年後見人らの多数決によって後見事務を決する手続きを導入する必要があろう。非常に煩雑であるが、現在、戦前のような「親族会」を構成することも困難であろうし、かといって、他に適切な方法は考えられないから仕方あるまい)とし、成年後見人の事務について(つまり、後見人解任請求等事件を除く)の家庭裁判所の介入(監督等)はしないこととする。推定法定相続人がいないか、その全員が成年後見人就任を辞退したり、推定相続人間で意見の相違があるなどの事情で後見事務が円滑に行えないなどの事情がある場合には、家庭裁判所が第三者後見人(ただし、資格のある監査人を設置する法人に限る)を選任し、家庭裁判所がその後見事務について監督責任を負う(注3)。
(注2)本項では、「補助人」については特に触れないが、補助人が必要となるのは、①本人について契約取消権を行使する必要がある場合や、②補助者生活の援助をしてくれる親族等がいない場合であろう。
 ①の場合で、かつ、「相続争いの前哨戦」が起こる場合は、その前哨戦当事者間において、仮処分ないし民事訴訟でその紛争に決着をつけられるような手続を用意する必要があろう。
 ②の場合、補助人になるのは、当職が津家庭裁判所伊賀支部在職中、伊賀社会福祉協議会とともに、その養成に関与した市民後見人(補助なので市民補助人)がその給源になるであろう(なお、補助の場合でも、推定法定相続人がいないか、同人らが補助人になることを辞退した場合は、財産管理について法人による監督を要するかもしれない)。
(注3)当職は、成年後見人が、そもそも意思を表示できない「成年被後見人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活に配慮」(民法858条)して後見事務を遂行しているか否かを監督する(民法846条参照)という非常に困難な仕事を認知症を含めた障害を持つ人の病態や社会福祉制度等についてほとんど無知である(と思われる)家庭裁判所裁判官が担当するという現在の制度は、そもそも、お話にならないと考えている。
 したがって、成年後見については福祉等の専門的知見を持つ裁判官(その採用は、通常の裁判官とは異なる方法となろう)が担当するか、少なくとも労働審判のように福祉等の専門家を交えた参審制で行うことが必要かつ必須と考える。
 つまり、身上監護を含む後見事務について、通常法律のことしか知らない現行の裁判官が担当することに無理があると考えるのであるが、「民法」部会である貴部会に、そのような裁判官ないし裁判制度改革の提案をお願いするのは無理があろうと考えている。なお、このことに関連して一言付け加えると、私は、そのような知識経験を少しでも得るため精神病院のSPW(精神保健福祉士)の方に教えを請うたり、社会福祉協議会等に出入りすることが多かったが、ある福祉職の方から、成年後見制度をどこが引き受けるかについて厚労省と最高裁が互いに相手に押しつけあい、最高裁が負けて引き受けたという話を聞いたことがある。その話を他の福祉職の方にしたら、そんなことも知らないのかという顔をされた。
 その話が事実か否かは不明である。
 しかし、少なくとも福祉職の方々の間では「常識」の部類に属する話らしいし、福祉職の間では、成年後見については、「措置」の時代と同様、行政が主体となって行うべきだと考えていると感じた。
第2 成年後見人制度についての法律違反及び不当と考えられる事例について
 私は、禁治産等制度の改正について議論されていた当時(平成7年~10年頃)、禁治産等事件を含む家庭裁判所管轄の事件には全く関与しておらず、上記補足説明を耳にして、成年被後見人は、植物状態で意思表示が全くできない人のみがなるもので、その要件はほぼ例外なく医師による鑑定を経るものと理解した。だからこそ、その多くは長年の人生をかけて、幸せな老後を送るためにせっせと蓄財した多額の財産を有するであろう老「人」からその財産の「財産処分権」を奪うというその「人」の身に立つとやるせない非情な極限的措置もやむを得ないのだと考えていた。
 そのことは、当時、私の周囲の裁判官(いずれも地方裁判所勤務)も同様の理解をしていたと断言できる。ところが、私、津家庭裁判所上野支部(当時の名称)に赴任して、初めて成年後見事件に携わったとき、その「実務」における、当職においてはどのように考えても違法又は不当と思われる「趨勢」(下記1、2で指摘するもの。特に下記3については、今もってどうにも理解できず、今直ちに何とかならないものかと思う)を知った私は、上記の理解が全く誤っていたことを知って、愕然とした。なお、私は、後見事務に関与した際には、その趨勢に出来る限り従わなかったつもりである(後見事務(特に監督)のためのマンパワーを補うため、定年退職された地元の優秀な検察事務官(検察庁支部の事務長をされた方)を参与員として常雇いのように裁判所に来てもらっていたら、最高裁家庭局から、直接私にやめるように命ずる電話があったが。参与員の活用は家事審判法上認められており、これも、私が重視する「裁判官の独立」について、私が直接被った多々ある最高裁事務局による侵害のひとつであった)。
 その「趨勢」が生じた実際的理由(後見であれば成年後見人に代理権を付与することについて本人の同意は不要であって便利なこと、鑑定人を得ることが困難で、得たとしても申立人に鑑定料を予納させることに抵抗を示されること等)については直ちに理解できた。しかし、裁判官は法律を守るよう義務づけられているのに、全国の家庭裁判所において行われていた後見事件の運用(=趨勢。裁判官は、憲法と法律以外の何物からも自由かつ独立して仕事ができる筈なのに実際はそうでないことについてはここでは論じない)は、以下述べるとおり、その裁判官に法律違反を強いるものであった。
 当職は、そのことが、私の高等裁判所勤務当時法律や証拠無視の原審判決等に接し、弁護士になってからも、いくつかの法律・証拠無視の判決や決定(いずれも結論ありきのご都合主義というほかないと思われた)に接して、当職の血圧を上昇させるのみならず、国民の裁判所に対する信頼を失わせる原因となっているというのも、あながち穿ち過ぎではないと考えている。
 以下、当職が成年後見制度の従来及び現在の「実務」における法律違反あるいは明らかに不当な事実と考えるもののうち大きな点を4つ(私の念頭に上るのは、そもそもこの制度がお年寄りの幸せに叶っていないことであるが、ここでは、その点についての言及は避ける)を述べ、第1記載の当職の意見理由の一端としたい。
1 民法7条は、後見開始の審判は、「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」に対して行うと規定している。この規定の通常の読み方をすれば、そのような者とは、補足説明が述べるように、「植物人間状態の者またはそれに類する者」と考えるのが、日本語を解する者の多数であろう。
 しかし、現実が異なることは、皆さんよくご承知のことと思われる。
 私は、よく、後見被害者(被後見人本人を含む)から、この条文を示されて、被後見人になった人はこれには当たる筈はないのに、なぜ、後見開始になったのか、裁判官は法律を読まないのか、と聞かれたとき、私は、かつて知った「トンデモ」判決等の実例を話した上、「裁判官の中には平気で法律や証拠に反する裁判をする人もいるのです」とか、「私は先輩裁判官から、同じ記録でどのような結論の判決でも書けないと(つまり、黒を白に、白を黒とできないと)、裁判官は務まらないと言われました」(これは私の経験した実話である)と答える。
 なお、これらは、私が高等裁判所裁判官であったときに、実際にそうとしかいえない一審判決を複数見たこと、及び弁護士になってから受けたいくつかの一審敗訴判決(そのうちの一部は高裁で逆転勝訴したが、高裁でも棄却された事例も多い)から、自信を持っていえることである。
 そこで、幼稚園児程度の日本語力しかない裁判官でも間違えないよう(念のため付言するがこれは嫌みである)意思能力が全くない「常況」の人についてのみ後見開始の審判がなされるよう、第1の1のとおり他義を許さない明確な日本語による規定(条文)に「改正」すべきである。
2 家事事件手続法119条は「家庭裁判所は、成年後見人となるべき者の精神の状況につき鑑定をしなければ、後見開始の審判をすることができない。ただし、明らかにその必要がないと認めるときは、この限りでない。」と規定する。
 このただし書の場合について、現行成年後見制度策定に関わったと思われる小林昭彦前法務省民事局参事官、大鷹一郎法務省民事局第二課長及び大門匡最高裁判所事務総局家庭局第一課長編「一問一答 新しい成年後見制度」(商事法務)262~263ページには、要旨、(コンメンタール家事事件手続法Ⅰ(青林書院。以下、「コンメンタール」と略記)424ページの記載が秀逸なのでそれを引用する)「本人が植物状態であると医師が診断している場合や、本人について近接した時期に別件で鑑定が行われていることにより、本人の精神の状況が明らかである場合のように、かなり限定的な場面の鑑定省略が具体的例」であると記載されている。
 ここでも、後見被害者(同)は、この条文を示して私にこう質問する。
 「どうして、ピンピンして動き回っている○○(父や母等)について一度も鑑定などされたことのないまま後見開始の審判がなされたのですか」と。
 この質問に対して、私は答えを見いだせず、絶句するしかない。
 これも、第1の1のとおり「改正」すべき理由である(補助の場合は、家事事件手続法138条、代理権付与に関する民法876条の9第2項、876条の4第2項の規定があるので、何とか大丈夫ではないか?)。
 私は、上記1、2に指摘した、裁判所において実際には実施されていない各法律の理念はいずれも正しく、是非とも実現しなければならないものだと信じる(私の見解が誤っているのであれば、指摘していただきたい)。したがって、それらが実現されていないのは、専ら法律に書かれた日本語の通常の字義どおり裁判しない裁判所が悪いというほかない。そこで、これら法律の理念を是非とも実現しなければならない法律については、どんなに不埒な裁判官でもどうしてもその法律の理念を守らざるを得ないように、その法律の条文を「改正」するしかないので、第1の1の改正案を提案したのであるが、こと、家事事件手続法119条については、これ以上明確な文章は考えつけない。
3 家事事件手続法123条1項は、「次の各号に掲げる審判に対しては、当該各号に定めるものは、即時抗告をすることができる」とし、その第1号には「後見開始の審判 民法第7条(中略)に規定する者」と、そして民法第7条には「本人、配偶者、四親等内の親族(後略)」と各規定されている。そこで、私の相談者は言う。「私は、本人の四親等内の親族です。後見開始決定を昨日知った(多くは後見申立ても、後見開始も知らず、突然専門家成年後見人から被後見人名義の通帳を渡せと脅されたと訴える方も多い)ので、即時抗告したいのですが・・・」
 ところで、家事事件手続法122条1項は、「次の各号に掲げる審判は、当該各号に定める者に通知しなければならない」と、そして、同項1号は、「後見開始の審判 成年被後見人となるべき者」と規定しているが、「成年被後見人となるべき者」は、大抵上記相談者から引き離されているのでので、相談者は同審判を知る由もない。
 また、同法123条2項は、「審判の告知を受ける者でない者(上記相談者はそうである)による後見開始の審判に対する即時抗告の期間は民法843条第1項の規定により成年後見人に選任される者(つまり、専門家成年後見人)が審判の告知を受けた日から進行する」と規定しているので、上記相談者が私に相談したときには「成年後見人に選任される者が審判の告知を受けた日」から同法86条1項に規定する2週間の不変期間が経過してしまっている。
 そこで、相談者は、「同法123条1項で四親等内の親族は後見開始審判に対し即時抗告できる筈なのに、その審判を知ってすぐに即時抗告しても不適法になってしまうというのでは、同条同項記載の『即時抗告をすることができる』というのはうそということになる」と言うのであるが、私もそれについて反論する余地はなく、そのとおりだと答えざるを得ない。
 私は、この点の問題を避けるためにも第1の2の「改正」を提案している(成年後見人には、当然のことながら後見開始決定は告知される)。
4 これは、成年後見制度プロパーの問題ではないが、特に、成年後見に関して直面する問題である。この問題の解決のため、第1の2の「改正」を提案した。
(1) 家事事件手続法47条各項は、次のとおり規定する
1項 当事者又は利害関係を疎明した第三者は、家庭裁判所の許可を得て(中略)家事審判事件の記録の閲覧若しくは謄写(中略)を請求することができる。
2項(要旨、録音テープ、ビデオテープについては複製を請求できる)
3項 家庭裁判所は、当事者から前二項の規定による許可の申立てがあったときは、これを許可しなければならない。
4項 家庭裁判所は、(中略)当事者若しくは第三者の私生活若しくは業務の平穏を害するおそれ、当事者若しくは第三者の私生活についての重大な秘密が明らかにされることにより、その者が社会生活を営むのに著しい支障を生じ、若しくはその者の名誉を著しく害するおそれがあると認められるときは、前項の規定にかかわらず、前項の申立てを許可しないことができる。事件の性質、審理の状況、記録の内容等に照らして当該当事者に同項の申立てを許可することを不適当とする特別の事情があると認められるときも、同様とする。
5項 家庭裁判所は、利害関係を疎明した第三者から第1項又は第2項の規定による許可の申立てがあった場合において、相当と認める時は、これを許可することができる。
(2) 当職の知る限り、成年被後見人本人及び後見開始決定が取り消された(元)成年被後見人(すなわち「当事者」)及び成年被後見人が亡くなり同人を相続した者(当職は「当事者」の地位を引き継いでいるから当事者に該当すると考えるが、家庭裁判所は「利害関係人」だとする)から後見開始事件記録及び同事件に係る後見監督記録の閲覧謄写を求めてその全部の閲覧等が許可された事例を知らないし、その全部が不許可になった事例すら経験している(最後の事例については国を被告として国賠請求訴訟を提起している)。
(3) 家事事件手続法47条が、民事事件や刑事事件とは異なり記録の全面開示を原則としていない理由及び閲覧を認めない具体的な場合について、コンメンタール193~196ページは以下のように述べる。
「審判の結果に一定の利害関係を有する者等が,家事審判の手続に関与して自ら主張し,裁判資料を提出するためには,裁判所の判断の基礎となる資料について閲覧等をすることができるようにしておく必要がある。他方,手続保証の面からは,このようにいえても,プライバシーへの配慮も不可欠である。このようなこともあってあって,家事法(家事事件手続法の趣旨)においても(同法の前身である家事審判法と同様)裁判所の判断となる資料を当事者又は利害関係参加人が当然に知りうるという構造にはなっていない。つまり,裁判所が職権で行う事実の調査については,当事者はその内容を直接知らされないのであ」る。
 そして、当事者又は利害関係を疎明した第三者に対し、閲覧若しくは謄写について、「家庭裁判所の許可」をしない場合として以下のとおり述べる。
① 事件の関係人である未成年者の利益を害するおそれがある場合
② 当事者が家庭内暴力を理由に別居し、他方の当事者から身を隠している事案において、記録の閲覧により住所又は居所が知れることにより、他方の当事者が、暴力的な行動に訴えたり、執ようにつきまとうなどすることが予想される場合や、幼稚園等から聴取した結果を閲覧した当事者が逆上するなどして幼稚園等に押しかけ、暴言を吐いたり、罵倒するなどして、その業務の平穏を害するようなおそれがある場合
③ 当事者が他の当事者又は第三者の出生や犯罪歴、また、既往症・通院歴等私生活についての重大な秘密を知るに至り、それが社会一般に知られてしまうと、その者の社会生活に支障が生ずるおそれやその名誉を著しく害するおそれがある場合
④ 犯罪歴や病歴等プライバシー本件土地の要請が高い事項に関する個人情報や後見開始の審判事件における被後見人となるべき者の詳細な財産状況、特別養子縁組の取消しの審判事件における実父母及び養親の個人情報等
(4) さて、成年後見事件において、家庭裁判所が、成年被後見人やその相続人からの記録の閲覧の請求に応じない理由は何であろうか。
 (3)の①及び②の前段、③及び④はまず関係がない(④の被後見人となるべき者の財産状況は、被後見人及びその相続人は知りうる手段がある)。したがって、その理由は同②の後段、つまり、記録の閲覧をすることにより、成年後見人のした事務又はその事務について知った被後見人やその相続人が、「逆上するなどして某所(多分、成年後見人の事務所や家庭裁判所のことを心配しているのだと思われる)に押しかけて、暴言を吐いたり、罵倒するなどして、その業務の平穏を害するようなおそれがある場合」に当たる、ということしか考えられない。
(5) しかし、成年被後見人本人が成年後見に付されている間の収入及び支出について、特に成年後見人により自らの財産がどう処分され、どう使われたのかについて一切知り得ないということは許されるのであろうか。また、成年被後見人の財産を相続したその相続人が、父や母の財産が、本当にそれだけであるのかについて検証するため、父又は母が成年後見に付されている間の財産状況の動きにについて知る権利はないのであろうか。
 実は、当職は、相続(遺贈を含む)制度は、婚姻制度及び戸籍制度とともに廃止すべきとの意見を持っており、個人的には相続人に上記権利はなくてもよいと考えている。
 しかし、現行の相続制度を前提とする以上、成年後見人から引き渡された相続財産がどうしてそうなったのかを知る権利は保証すべきだと考える。
 ところが、家庭裁判所が成年後見事件についての記録を開示しない以上(当然のことながら、成年後見人も同様開示しない)、同事件係属期間中の被相続人の財産状況については、一切知ることができないのである。
(6) 蛇足であるが、推定法定相続人間で意見の相違がある場合(多くは、遺産相続紛争の前哨戦が発生)には、現在のように、「推定法定相続人」というだけでは、「家庭裁判所の許可を得」られないとして、推定相続人ら全員が、被後見人死亡まで記録の閲覧ができずにその財産状況を知り得ない方が、成年被後見人(=被相続人)の安全や幸せには資するとは思う(注4)。
(注4)私は、大阪地方裁判所堺支部に在勤中、大阪国際空港の埋め立てに用いる土砂を得るため付近のそれまで二束三文だった「山」が高値で売れて、大金持ちになってしまった老女の身柄がその推定相続人間で奪い合われ、多数の遺言書が作成された事件に遭遇したが、その女性の本人尋問の際の悲痛な言葉が耳に残る。
第3 以下、当職が、第1の1、2記載の意見を持つに至った経緯として、当職が、津家庭裁判所上野(伊賀)支部で後見裁判所の職務をしていた間に生じた問題や、弁護士になってから接した問題をアト・ランダムに述べる(以下は、いずれも過去に私が作成した文章(一部手直しした)であるが、これをもって上記理由の説明に代える。なお、原文どおりに引用したため一部上記第1、第2の記載と内容的に重複する点があるが、ご容赦願いたい)。
1 同支部では、金融機関や老齢の親族等を入所させた施設等の指示を受けて、成年後見制度の何たるかについて知らないままその申し立てた後、将来後見が開始されたら、あるいは、開始後にその親族の資産を自由にできないと知ってその申立ての取下げを求める申立人らが、それができないと述べる激しく家庭裁判所の窓口職員に迫り、同職員が非常に苦労する様子(暴力被害を受けるに至ることもあった)を見聞きしたが、そのこと一つ取ってもこの制度の問題性が明らかであると思う。
2 貴部会委員に敢えて説明する必要はないと思うが、念のため付け加えるに、我が国においては、いかに認知症になったとしてもその「家」の資産は「家長」であり「当主」である被後見人の名義であることが多く、その「家」の大きな出費は、被後見人の名義資産を用いるのが当然である。
 つまり、まだまだ「家」制度の残滓が残る我が国において「家」でなく「個人」を前提とする現民法の制度設計自体が我が国にそぐわず、そのことが成年後見制度において顕著に現れているといえよう。
3 同支部においては資産も身寄りもないが施設入所の必要はない独居老人について後見等(保佐あるいは補助だったようにも思うが記憶がない)が申し立てられることがあり、そのような場合、仕方なく(当時、行政において後見等に関する予算措置はなかった)、当時、同支部で調停委員をしていただいていた非常に温厚かつ誠実な司法書士の方に、報酬なしで後見人等をお願いすることがあったが、その方から、ある日、次のような話を聞いた。
 すなわち、その被後見人等から、電球が切れたから取り替えてくれなどという日常生活について手助けを求める電話がかかるが、被後見人等に電気屋さんを呼ぶだけの資力はないので、やむなく自分がかけつけ、それに対応する事務を行っているが、自分も相当の年齢なので怪我したりしないかと不安であると。
 しかし、当職には、その後見人等の不安を解消する手立てがなかった。
 現在、被後見人にある程度の資産や年金がある場合は、自宅で生活できる方でも施設に入ってもらうことで、成年後見人に上記のような事務を行う必要はないが、そもそもお年寄りは、私の知る限り、ほぼ全員が最後まで住み慣れた自宅で過ごしたいと望まれる。したがって、施設入所が原則のようになっている現在の後見制度のあり方は被後見人の幸せに繋がっていないと思うし、現在でも後見人等の報酬の出所がなく、後見等開始ができない事例に度々直面する。
 これらの問題に対処することを考慮した制度だと聞き及んでいる(相当額の国費も投入されているようである)ドイツの「世話人制度」を参考に、日本の制度も根本的に改めるべきだと考える。
4 同支部では、当職の方針と、そもそも、その管内に弁護士は1人しか実質的におられなかったため(刑事国選事件のみを担当してくださる老齢の元裁判官弁護士もいらして非常に助かっていたが)、最高裁判所家庭局の指示は無視し(というか、私は、当時も現在も専門家後見人を選任すべしとの同局の指示は大きな間違いだと考えている)多額の資産を有する被後見人についても、親族後見人を選任していた。
 そして、当職は、親族後見人から、以下のような判断を求められ返答した。
(1) 被後見人所有の一等地の空き地に、コンビニエンスストアを建築したいという申入れがあった。税理士に相談すると、コンビニエンスストアを被相続人が借金をして建築し、それを賃貸することにより、大きな相続税対策になるとのことである。確かにこのまま相続が発生すると相続税が払えそうにないので、後見人としては是非ともその話に応じたいが、よいか。
 当職は、持ち込まれた話の内容や資金計画などからして、多分、合理的な話だと思われたが、(今にして思うと専門家に鑑定を依頼すればよかったかと思うが、そこまで思い当たらず)悩んだ末、後見人の権原でそこまでの財産処分は無理ではないかと返答した。
(2) 被後見人の孫が大学に入学した。これまで、他の孫に同様のことがあった場合、被後見人は1人100万円の祝金を渡していたので、今回も同様にしてよいか。
 当職は、非常に悩んだ末、今回は10万円にしておいてほしいと返答した。
(3) 被後見人が、死ぬまでに一度でいいからミンクのコートを買って着てみたいというので購入してよいか。
 当職は、比較的若い後見人が、ミンクのコートをほしいが故にそのようなことを申し出るはずはないと思いながらも念のため、その被後見人の世話をしているヘルパーに被後見人が真にそう望んでいることを確認した上、被後見人の願いを叶えて良いと返答した。
 以上のほかにも、私は後見事務については色々な相談を持ち掛けられたが、当時、同支部の地家裁及び簡易裁判所の全ての業務を1人で担当していた(したがって、民事訴訟の人証尋問(同支部の刑事事件で否認事件はほとんどなく、長時間の尋問はなかった)中に調停が成立し、一時休廷することも度々あった)上、その道の専門性もない裁判官である私が、どうして上記のような判断をしなければならないのかと、大いに疑問に思ったものである。
 このような判断は、そもそも親族後見人の判断に任せればよい(そのためには、推定法定相続人から親族後見人の判断に異議を述べないとの一筆を取っておけばよい)のにと痛切に思った(しかし、そのようなことを独自に行うだけの勇気はなかった)し、後見人の監督を「親族会議」が行っていた旧民法の方がよほど合理的(もっとも、現民法制度の元では無理なことは承知している)だと感じた。
5 2017年に司法研修所で開催された「家庭裁判所の当面する諸問題」と題する研究会に、当職(当時・広島地・家裁福山支部裁判官)が参加した際に、「1エ 成年後見に関する事件、2イ③ 家庭裁判所と国民、地域社会との関係は、どのようなもので在るべきか」について、話題事項として提供したもの(なお、当職が津地・家裁上野支部に在職中同伊賀支部に名称が改称された)。
 当職が、裁判官時代から成年後見制度及びその裁判所における運用について違和感を持っていたことを示すものである。
「(話題事項)
 成年後見に関する事件については、市町村等の地方公共団体、社会福祉協議会等社会福祉法に基づく団体や地域のボランティア団体、さらには老人福祉法に基づく老人福祉施設、精神保健福祉法に基づく精神病院などとも常に密接な協議を持ち、連絡を取り合って、(身上監護を担当する)後見人候補者(子どもの手を離れた専業主婦や定年退職後の社会人等を想定)の開拓育成、(財産管理を担当する)後見人ないし(親族を後見人に選任した事件については原則全件に付する)後見監督人に選任されるとともに、後見等申立てについての援助を行うなどの機能を有する法人(社協等を主体として設立するNPO等を想定)の設立、さらには鑑定人(家事審判規則24条)の確保などを図ることによって、被後見人等、ひいては地域における老人や障害者の権利擁護に遺漏なきを図るべきである。
(提出理由)
私が、平成13年4月津家庭裁判所上野(現・伊賀)支部(1人支部)で初めて後見等事件を担当したときに感じた驚きは今もって強烈である。高齢化社会に向かっている上、被後見人等が死亡するまで後見等監督をしなければならない以上、それに備えた財産管理システム(当然それに対応できるOAの開発・導入が必要であった。)及び大幅な増員が不可欠であることは明らかなのに、最高裁は、それらについて、一切考慮していないように思われたからである。そこで、私は、私の勤務する支部だけでもそれらに備えたいと考え、まず、後見監督等に当たる能力を有する参与員を採用して活用した(ちなみに、私は、家事審判法10条の趣旨に従い、審判事件については、原則として、全件につき参与員を選任していた。)。また、地域の社会福祉協議会(以下「社協」という。具体的には当時の上野市社協。現伊賀市社協。厚生労働省未来志向研究プロジェクトとして福祉後見サポートセンターの立上げを計画するなど、後見について非常に関心の高い社協であった。)と、積極的に連携した。具体的には、社協から講師派遣要請を受けて、設立が予定されていた伊賀福祉後見サポートセンターを核として伊賀支部地域における円滑な後見等事務が行えるよう提言するため、社協で毎月行われていた福祉後見サポートセンター設立準備会議に参加した。さらに、家庭裁判所と地域社会との連携を深めるため、社協の担当職員及び伊賀支部所属の調停委員らとともに、前記会議等で知り合った地方公共団体の福祉担当職員、精神病院の精神保健福祉士(PSW。同人らが勤務する精神病院やデイサービス施設等も積極的に見学した。)、民生委員らと定期的に意見交換の機会を持ち、その成果として伊賀相談ネットワークの立上げにも関与した。そして、将来的には、社協を母体として設立するNPO法人(弁護士や司法書士等の自然人はいつかは死亡する以上、法人でなければならなかった。また、社協を後見人等に選任することは、権利擁護事業を行っている被後見人について、問題があった。)に上記財産管理システムを導入(当然、そのシステムを取り扱う要員を雇い入れる必要性もあると考えた。)してもらうため、権利擁護をしていない被後見人予定者で、かつ相当額の報酬の支払いが可能な事案について、積極的に、社協を後見人又は後見監督人に選任することなどを計画し、その一部を実行した。しかし、参与員の活用は、その高額な手当の支給を最高裁家庭局からとがめられて頓挫したし、社協の積極利用についても、後任裁判官に詳細なメモで引き継いだが実行されなかった。
 私は、平成17年4月以降4年間、刑事事件のみを担当し、平成21年4月現任庁に着任後、後見等事件のごく一部につき填補裁判官として担当するようになったものの、後見等事件についての動向には詳しくない。しかし、財産評価額1000万円未満の事件や、弁護士等が後見人又は後見監督人となった事件については監督処分事件を立件しないなどの方針が出されているなどと聞き、これまた驚いている。そもそも、1000万未満の財産であっても、いや、そのような金額の財産であるからこそ、被後見人等にとっては大切な財産なのではあるまいか(私が上野支部着任後、未成年後見や財産管理事件等の全件掘り起こしをした際に判明した不正事件の中には、資産額1000万円未満ではあるものの、被後見人に与える影響が非常に深刻な横領事案があった。)。また、現在においても弁護士等による横領事件が多発していることは周知のことであるし(被害額が多額に及んだ場合など、弁護士保険等ではまかなえない可能性も高い。)、今後弁護士の質の低下が確実と思われる中、そのような方針が正しいとは思われない。さらに「リスク要因」を発見するという方針を漏れ聞いたこともあるが、「リスク」が明らかな事件については当然それに応じた対処をしている筈で、私の乏しい経験に照らしてみても表面上リスクがないと思われる事件こそが、「リスク要因」のある事件なのではあるまいか。
 そこで、私が津家庭裁判所上野支部で計画したような方策を、全国の家庭裁判所において採用していただきたく、提出した次第である。
(意見)
そもそも、平成11年の民法の一部改正法による成年後見等事件を、家庭裁判所(のみ)が担当することとなったのは、大きな過りであった。仮に引き受けるとしても、家庭裁判所を、他の行政機関や民間ボランティアと連携しやすいような、より行政機関であることを明確にした組織に変革するか、事件増に応じて、後見監督等事件を担当する独立したセクションを創設することの確約を、国会に求めるべきであった。前記改正法立案当時、その担当者は、アメリカ合衆国連邦議会で、後見人による不正が大きな問題となっていたことを、十分認識していた筈である(日本社会福祉士会編集「アメリカ成年後見ハンドブック」勁草書房刊参照。同書によると、合衆国では、成年後見等事件は「検認裁判所」で取り扱われている例が多いようである。)。現在、各家庭裁判所の後見事件等の担当者が非常な苦労をしていることについては、その重大な責任が、上記改正法立案当時の最高裁家庭局における担当者(そういう方がおられたのではないかと想像している。)にあるものと考える。
しかし、今からでも遅くはない。我が国において、極めて重要なこの制度を家庭裁判所が担うとされている以上、家庭裁判所が主体的に行政(地方公共団体を含む。)や立法、諸団体、更には国民全体に働きかけて、この制度をそのあるべき姿に変革すべきである。(以上)」
6 当職は、弁護士に転身した初期に相談を受けた石井靖子氏ご夫妻から、成年後見制度は私が裁判所で感じていたのとは次元の異なる大きな問題があることを知って、まさに「驚いた」。
 上記「後見被害者」の「被害」については、当職以外の方々において詳細に述べられるであろうから、以下、典型的かつ代表的な事例のしかも要点のみを、簡単に述べておく(秘密保持のため、脚色している)。
 当職が、これらの事例に接して思うのは、最高裁判所が、親族後見人による横領等がなされないよう後見人を「監督」すべき裁判所の責任逃れのために、その能力も適性も全くない弁護士に成年後見人の仕事を押しつけたものであり、この業務をこのままそのような弁護士が行い続ければ国民の弁護士に対する怨恨を増すばかりだから、弁護士は、裁判所に依頼されても後見人業務の依頼は拒否すべきだということである。
(1) 両親(資産家)を介護するため仕事をやめ、両親所有名義の家に住んで両親の介護をしていたところ、その人のきょうだいが(その人に両親の財産を奪われるとでも思ったのであろう)後見開始を申し立て、弁護士後見人がその方の「経済的虐待」(両親の年金ないし資産からの収益で生活していたこと)を理由にその両親をどこかの施設に移し(当然のことながら、その人に、両親を移した施設の場所は教えない)、両親の所有名義の家は裁判所の許可を得て売却され、その人は、その家からの退去を命じられ、収入もなく住む場所も失ったので、自殺するしかないとの(電話による)相談を受けた。
(2) (大変大きな資産を有する)両親は、従前から、毎日自宅近くの高級ホテルで昼食を取る習慣であったところ、その方(女性。両親の世話をしていた)の兄弟が後見開始を申し立てた。
 後見人弁護士は、両親の生活費として毎月10万円ずつしか支払わなかったが、両親(施設入所はしなかった)は毎日ホテルで食事をする習慣を改めることができないので、以後、両親がその方のためとして作ってくれていた財産(保険や動産等)のほか自腹で両親にホテルでの昼食を続けさせた(後見人弁護士は、その費用は必要がないとして、その方の償還請求に応じなかった)ところ、その方は、両親の財産を横領したとして、後見人弁護士から訴訟提起されて敗訴したことなどを理由に、遂には破産に追い込まれた。
(3) 最近、主に大都市及びその周辺自治体の被後見人の家族から相談を受けることが多いのは、同居していた子が親を虐待したとして自治体がその親を連れ去った上、後見を申し立て、弁護士後見人は、子に親の居場所を教えず会わせもしないという事案である。
 私が受任している一例では、たしかに娘(私の依頼者)がうつ病を患っていたこともあって、イライラして物を投げ(母に向かって投げてはいない)、それを見た母がぎゃっと叫んだ出来事をたまたまその自宅を訪れたヘルパーが目撃したことをきっかけに、首長が高齢者虐待防止法9条を適用して、娘に何ら確認することなく母を保護(娘から見ると、「拉致」)し、その後、娘に母の居場所を全く知らせず、役場で2度娘に会わせたものの、その際の発言内容は制限され、数年後に突然、弁護士後見人から、母が緊急入院した病院を知らされて駆けつけると、母は、既に心肺停止状態となっていた。
(4) なお、上述の石井靖子氏の事例は、老人施設の顧問弁護士が、後見について、首長申立てをすると述べていたが、それがうまくいかなかったようで、同施設に入所中の(多額の資産を有する)本人の代理人となって、当然のことながら石井氏に全く知らせないまま後見開始の申立てをし、裁判所も石井氏らにその旨全く知らせないまま、同弁護士推薦の弁護士を後見人に選任し、以後、老人施設顧問弁護士と後見人弁護士が共同して被後見人本人が石井氏夫妻ら親族と会うことを拒んでいるところ、被後見人も石井氏ら親族に会いたくないと述べていると主張して(被後見人と会えないので、それが真意なのか、それとも、無理にそう言わせられているのかを検証する術はない)、決して被後見人と上記親族とを会わせないし、被後見人が希望している地元に行かせることも、親及び早世した妹の墓参りをさせることもなかった、というものである。
7 当職は、上記6(1)のような事例(注5)は、現行法上、後見人に違法事由を認め難いし、上記6(2)は明らかに民法858条に謳われている「成年後見人は、(中略)成年被後見人の意思を尊重し(中略)なければならない」という規定に反しているが、同条は訓示規定と解されるので、いずれも成年後見人の違法を主張することは困難であると説明し、受任をお断りしている。しかし、6(3)のような類型事例(ある人は、公務員は後見申立予算措置ができたので「成績」のため首長申立てできる事案を物色しているのだという)については親族を会わせないという後見人又は施設の対応が違法だと主張できる余地があると考え、訴訟代理を引き受けているものの、今のところ全敗である。
(注5)このように、推定法定相続人が、親の財産を保全するため後見開始を申し立てることにより親が自宅に住めなくなるなどの不幸に見舞われるのみならず、親の介護をしていた者が、きょうだいによって住む場所を奪われ、生命すら奪わられかねない事態が生じているのにもかかわらず推定法定相続人を成年後見人に選任すべきだという当職の意見に疑問を持たれる向きもあるかもしれない。しかし、推定法定相続人全員又は同人らが選任した推定法定相続人が成年後見人となれば、推定法定相続人らにおいて後見事務が親のことを思ってなされているか、それとも将来相続する親の遺産を減らさないことのみに関心を持ってなされているかが分かるし、推定共同相続人間での相互監視もできるであろう。
 なお、誰も親の幸せを考えず、推定法定相続人全員が親の遺産の保全第一で後見事務をしたとすれば、それは、そのような子に育てた親の責任(自業自得)であって、その事態を甘んじて受け入れていただくしかなかろう。
(以上)